楽天モバイルが医療現場の業務効率向上に貢献
正幸会病院、トランシーバーアプリで患者情報素早く共有
楽天モバイルは、スマートフォンとクラウド経由でソフトを提供するSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)を組み合わせたサービスを提供し、医療機関の業務効率向上に貢献している。このサービスを導入する医療法人正幸会正幸会病院(大阪府門真市)は、現場での情報共有を円滑にし、業務効率向上につなげるDXを実現。DXを推進する上で重要課題となるセキュリティーは、ログインの仕組みで対策するため専門知識は不要に。同病院の活用例を東大里院長と外来看護師主任の宮城泉氏に聞いた。
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■PHSの代替にスマホ、決め手はセキュリティー対策
医療施設において長く使われてきたPHSは、音声通話にコミュニケーションが限られ、伝達ミスが起こりやすい。2021年に公衆サービスはすでに停止しており、構内に限った使用ができるとはいえ、今後は端末や構内基地局の値上がりに加え、入手そのものが困難になることが予想される。正幸会病院ではPHSの代替として楽天モバイルのスマートフォンを利用している。院内のセキュリティー対策から業務効率の向上まで、その活用方法はさまざまだ。
「楽天モバイルは必要な機能がそろっている」と東院長は評価する。正幸会病院ではクラウド型電子カルテに加え、さまざまなSaaSを利用している。「DXを進める上で特に重視しているのはログインの部分」と東院長は言う。権限のある職員のみがログインできる安全性の確保は大前提で、さらにシングルサインオン(SSO)と呼ばれる、1度のログインでSaaSなど全てのアプリやソフトが利用できる状況を作るのが理想だという。楽天モバイルの提供するスマートフォンでは、ログインの際に生体認証を利用可能。端末所有者本人以外のログインを防ぐ。IDとパスワード利用よりもログインしやすく、さらに不正防止の一石二鳥の役割を果たしている。電子カルテという高度な個人情報を扱う端末であることから、権限者のみしかログインできない生体認証機能は、安全面で大きな存在となっている。さらにSSOも実装し、1度のログインで済む仕様となった。
■SaaSの活用で業務効率を向上
楽天モバイルではスマートフォンに加え、医療機関の業務をサポートするSaaSも多数用意されている。代表的なものはクラウドPBXとBuddycom(バディコム)だ。クラウドPBXとは、クラウドにより、スマホを使って院外からも内線電話が利用できる。電話機の追加や削減も工事が不要で、監視・保守も提供会社任せと、運用に関する手間が病院側に必要ない。さらに医療現場で大きな武器となっているのは、通話ボタンを押せばグループ内のメンバーへの一斉発信ができる、多機能トランシーバーアプリであるBuddycomだ。このアプリをスマホにインストールすることで、情報共有に威力を発揮する。
看護師の宮城氏によると、他のメンバーとの情報連携にBuddycomを活用し、「スマホをインカムとして常時使用している」という。医師だけではなく、看護師、外来受付、臨床検査技師や放射線技師など業務にかかわる人物全員がBuddycomを使用している。患者の来院情報などを全員が共有するため、それまで各職種で個々に発生していたやりとりや確認作業を減らすことができた。
病院においては診察の結果によって、検査などメニューが追加されることも多くある。かつてはPHSが連絡手段だったが、伝達ミスはよくあったという。診察や検査の進行具合や変更が一斉発信によって随時報告されることによって、対応がそつなく進んでいくようになった。処方箋や会計の用意といった、治療関連の業務が全て終わった後に必要な作業の準備も、タイミングよくできる。「処方や診察のもれといったミスはほぼなくなった」という。Buddycomを通して話した内容はテキスト化される。チャットアプリとも連携しているため聞き逃しても後からやりとりを確認できるようになった。
東院長は、早くからDXの重要性を感じ、紙のカルテをオンプレミス型の電子カルテに変更した。ただ、オンプレだと制度変更などのたびにコストをかけた改修が必要になり、クラウド化を模索。オンプレのサーバーをクラウドに移しただけのクラウド・リフト型が多い中で、情報にアクセスがしやすく、将来拡張性のあるクラウド・ネイティブ型電子カルテの開発を進めている企業を東院長自らが見つけた。
「病院で使われる製品は全てクラウドシステムで統一されるべき」と言い切るほど、東院長はクラウドの未来を確信している。「高度な個人情報を扱っていることもあり、医療施設側に過度な警戒感がある。クラウドが危険というのは誤りなのだが、医療側もベンダーもオンプレ志向から脱出しにくい。非効率を脱するために医療やベンダーのみならず、行政も巻き込んで今の状況を変えたい」と東院長は強調する。
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